2009/12/04

枕の草子の世界

本日、N君に会ってきました。

昨日か一昨日お見舞いに きたI君のお土産”阿闍梨餅(あじゃりもち)”(京都の銘菓だそうです)”がとてもおいしかったというので、そうきたかとばかり、かくし持ってきたお菓子を取り出し差し出しました。彼は、見つかったら没収されるといいながら、笑顔で、それを秘密の場所に隠しました。

芭蕉がどこをどう通ったかをそらで言えるようになりたいという彼は、訪れるといつも「奥の細道」を手にしていて、紙の色がくすんだ、よれよれの文庫本には付箋がたくさんついています。
今日は、松島の風景を描写しているところ がすばらしいと、ページをめくって見せてくれました。
じっくり味わった人ほどにその古語が連なる描写のすばらしさをイメージできるはずもありません。 替わりに、次のように返答しました。


実際にこの景色を見ながらだったら、もっとわかるだろうね。美しいものは良い。ここ黒部扇状地の景色もすばらしい。火曜日の朝、車でI小学校に向かう時の美しさには思わず涙が出るくらいだった。


今週初めは快晴の空が続き、朝晩のひんやりとして澄んだ空気は薄い青の空に抜け、刈り取りの終わったたんぼが山吹色、薄い褐色、緑に彩られ、黒部川扇状地を取り囲む山々を背にして、遠く富山湾を超えて能登半島が見えるパノラマの中に入り込んでいく時、風景を形作っているすべてが、息を呑むほどの美しさで輝いていました。

その日の宵もすばらしく、夕方5時すぎ、東の山の上に満月の前の日の月---小望月(こもちづき)というそうですが---が雲ひとつない空にボ~ンと出て明るく光リ、今朝見た景色を透き通った陰影で覆いました。

彼も病室からこの同じ空気の美しさを眺めていたようで、「『枕の草子』の世界だな」とコメントしました。

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